手紙3

かつゆきへ


お久しぶり。随分忙しいんだろうけど、今度の同窓会にはせめて顔を出してくれよな。
何せお前は俺たちのなかの出世頭だからな。国内外を飛び回って活躍しているようで、随分マイルも貯まっているんだろうな。うらやましいよ。いや、そもそもお前はもはやサラリーマンじゃなくて執行役員だったな。じゃあ役員報酬か。いくらぐらい貰っているか、今度教えてくれよ。

お前が責任者となっている事業は全社の収益の柱で、世界で圧倒的なシェアを持っているんだってな。確かに昔はそうじゃなくて、お前の会社がそんなものをやっているなんて一般の人は知らなかったよな。今ではすっかり有名だ。


あれ?そう言えば、お前が新入社員として入社した時からそれは既に収益の柱とか言われてたような気がするぜ。
今お前がやっていることは昔からある枠組みの踏襲であり、技術の発展に合わせた製品の改良だけであって、お前が新たに作り出したものなんて、何もないんじゃないのか?多少の目新しさがあっても、結局、昔からある優位性に乗っかっているから出来ることばかりで、イノベーションと呼べるようなものは何もやってきてないよな。
出世競争に勝ってすっかり一流ビジネスマン気取りだが、全部過去の先達の残した財産に乗っかっているだけであることを忘れるなよ。幸運な奴め。
会社の中で偉くなると人格が腐りやすいが、お前も腐り始めてはいないか?気をつけろよ。まだ助言に耳を貸すことが出来るか?手遅れじゃなければいいが。

まあ、お互い体には気をつけような。検査は受けろよ。最近は、、、おっとお前の方がよく知っている話だったな。


昔の友より