M氏の華麗な経歴と肩書の意味は?

私が勤務する会社で実際にあった、大きな失敗事業の話しです。

2010年に、アメリカでの買収を含めて合計で100億円以上を投じて新事業に乗り出した。その後ヨーロッパにも次々に子会社を作った。怪しげなコンサルに多額のフィーを払い、得体の知れない人物を経営幹部に雇い入れた。他社の優秀な人材をヘッドハントし、欧米に駐在させるなどした。

が、しかし、

事業は思うように立ち上がらず、赤字が10億円以上に膨らみ、わずか数年後に売却しようとしたが全く売れる目処も立たず、やむなく撤退(廃業)するはめになった。海外では現地社員が数百人規模で解雇され、撤退費用は全部で数百億円に上った。

社内で本件を提案し中心的な推進者だったM氏は、当時の経営陣にうまく取り入り、社内では他事業部門の干渉を受けず好きなようにやれる環境を作ることに成功していた。「新事業だから従来のやり方ではダメだ」という錦の御旗があった。

しかし、結果は散々。2010年当時の役員会提案資料を見ると、極めて楽観的な夢物語ばかりが並ぶ。まあ、そんなものに見事にだまされた当時の役員連中もその程度の人たちだということだが。

M氏は、事業売却の検討が始まった頃、会社を去った。その後、そこそこ有名な企業に移り似たような活動を続けているようだ。

ヘッドハントで集められた人達もみんな新たなキャリアを求めて会社を去った(このまま残っても活躍の場がないのは明白なので)。

結局、多大なカネと時間を無為にしただけでなく、その失敗経験も、技術も、人材も、次に活かせるようなものは何も残せなかったという有様。

M氏は、大失敗の責任を取って会社を辞めたのはいいとしても、今でも誇らしげに過去の経歴と当時の立派な役職名をLinkedInに並べ立てている。President, CEO, Director, General Manager とかなんとか。

知らぬ者が見たらさぞかし立派な実績を上げてきたと思うだろう。よく恥ずかしくないものだ。過去の汚点と認識することなく、自分を高く売り込む材料に利用するとは。

カネを多く稼ぐのではなく、多く使う者が立派なビジネスマンということか。だったら自分のカネで起業してみては如何?その立派な経歴と肩書をひけらかして。