企業不祥事と経営者の矜持

なぜ企業不祥事が後を絶たないかというと、経営者にその根本原因があるからだ。そもそもお粗末な経営者は、現場が不正行為に手を染めないような風土を構築できていないことに加え、一旦不正の兆しが見つかった時に自己の保身を何よりも優先してその隠蔽に走るのである。

経営者は大抵の場合、従業員より高い報酬を得ている。会社の決算が赤字で従業員にボーナスが出なくても、経営者(役員)は当たり前のように従業員よりも高い報酬を得るケースも普通に存在する。尊敬に価する立派な人格と矜持を備えた経営者ならばいいのだが、「不正行為はしない」という当たり前の企業文化・風土が構築できるほどの尊敬の念を社内で集められるようなカリスマ性や経営理念の発信力も無く、かと言って組織の末端まで内部統制を構築することもせず、気が付けば不正と見なされるべき行為が発生していたらまず何よりも自らの保身、責任回避を考える経営者の、なんと多い事か。

特に、上場企業で内部昇格で役員の座に上り詰めたサラリーマン経営者にその種の輩が多いように思う。社内競争を勝ち抜いたご褒美として手に入れた地位と報酬だから、誰かの不正行為の責任を取って地位と報酬を失うなど、到底受け入れ難いのだ。そんな役員が集団で群れて保身を図るのだから始末が悪い。

そもそも役員は安定的な雇用契約の下で働いているのではない。高額報酬を得る代わりに健全な企業経営を実現する責務を負う。それが会社経営というものだ。来年も同レベルの役員報酬が得られる保証などあるわけもない。そのような役割であることを正しく認識して就任したのかどうかすら疑わしい。

何をしているか分からない輩は勿論のこと、充分な説明責任を果たさず保身に走る態度が見受けられる役員をバッサバッサと解任できるようにしなければ、日本の企業は衰退する。解任された後どうするかって?そいつが働きたいなら従業員として雇ってあげればいいだけ。

権力者は腐る。会社組織に権力者は必要だが、腐らない権力者を作るには、保身を考えない経営者の矜持を備えた人物を外から呼ぶ以外にない。