副社長の責任と権限とは

数年前、CFO担当の取締役執行役員が、CFOの役割はそのままで取締役「副社長」執行役員になった。それまでは長らく副社長の肩書を持つ人はいなかったので、久々の副社長復活ということになる。

ただ妙なことに、決裁権限などの決まりでは副社長自体に何の役割も責任権限も記載がない。極めて曖昧な存在に思える。今の副社長はCFOの役割を担ったままなので、現実的には全ての業務をCFOとして処理しているように見える。

実際のところ「副社長」とは役職を表すのではなく、単なる階級の表現になってしまっているのだろう。「専務」とか「常務」とかの訳のわからない呼称と同じだ。グレードが普通よりも上だと言いたいのなら「特級」でも「プレミアム」でもいい。特級執行役員にプレミアム取締役、悪くないと思うが如何だろうか。

ただ「副社長」と呼称する場合、どうしても社長のサブという印象になるので、個別の役割、責任と権限の設定が必要ではないか。CFOなどを兼務せず単に副社長のみを担う場合、社長との責任と権限の明確な線引きは必要だ。

会社によっては、次期社長候補者をいわば社長見習いとして「副社長」を任命することもあるだろう。ネクストバッターズサークルだ。そういう会社はおそらく、副社長とは次期社長という暗黙の了解があるのだろう。

副社長イコール次期社長を前提にしない場合は、副社長とは副大統領みたいなものという側面があり得るのではないか。社長に不測の事態が発生して業務遂行が不可能な場合に「臨時社長代行」がすぐに務められるようにするのが最大の責務だろう。その為に、日頃から社長の業務に精通しておくことが必要で、会議出席や情報共有に務めることがミッションのひとつ。もう一つは、社長の補佐役として助言をすることくらいか。要するに、副社長単独では、通常時は何も責任や権限が無いということを明確にしなければならない。

不測の事態に備えての臨時社長代行の考え方は、副社長を置くかどうかに関係なく整備しておくべきであるが、必ずしも代行者が副社長というタイトルを要するものではないはずだ。単に役員の報酬アップの理由付けの為だけに、副社長の肩書きが何人にも配られるような事態は何としても避けて頂きたいものである。