O氏の事業推進の手腕や如何に

O氏は中核事業の推進部長。その事業は会社全体を支える柱として、まだまだ稼ぎ頭として競合に打ち勝ち、成長を続けてもらうよう、O氏には推進の舵取りをしてもらわなければならない。

ところでO氏は数年前、新規事業の提案について次のように力説していた。

”新事業を提案するなら3年以内に単年度黒字化、5年以内に塁損解消できるようなものでなければ話しにならない。塁損解消まで10年もかかるような見通しを出すなど言語道断”

要は、短期間で確実に儲かる見込みがあるものしか認めないということだ。そんなビジネスチャンスが早々世間に転がっているわけがないし、自分達にそれが見つけられる力が備わっているとも思えない。それに、そんな事を言ってたら提案を通す為に強引に短期黒字化計画をでっち上げるに決まっている。○芝の原発事業と同じ構図だ。

またO氏の言い分は、短期間で確実に儲かるビジネスを提案する事が「正しい事」で、時間もかかり不確実性の高いビジネスを提案することは「けしからん事」であると言わんばかりだった。それはすなわち、一切のリスクを取らないと言う事。リスクを取らないのが良い事で、取るのは悪い事。でも、リスクを取らなければ失敗はしないだろうが成功もしない。新しいビジネスは何も生まれないし、今のビジネスも必ず廃れる時が来る。失敗を恐れず、果断にリスクを取り、失敗の中から新規事業の芽を見つけて育てる事を継続しないと企業としての成長はいずれ止まる。変化する「種」が生き残る話だ。

当時O氏はまだ課長クラスで新事業を推進できる立場ではなかったが、O氏の発言は社内上層部の主流派の価値観を大いに反映しているものだった。成功体験の連続しか経験していない人達が上層幹部を占めてしまうと、いびつな価値観が生まれる実例を見ているように思う。その後O氏は順当に出世し、冒頭で述べたように中核事業の推進部長をやっている。しっかりと社内主流派の流れを受け継ぐ人物として認められているということだ。皮肉なことに、O氏の守備範囲には過去に誰かが買収してから10年経っても累損解消どころか単年度黒字すら実現できていない事業会社が含まれている。完全にお荷物になってしまっているのだが、O氏担当の事業領域で将来性が見込まれること自体はO氏自身も認めるところだろう。但し、すぐに儲かる商売に化けるなどと考えるのが如何に甘いか、そろそろ理解し始めていることを希望する。

果たしてO氏はどのように打開してゆくのであろうか。