N氏の優雅な定年後再雇用の実態は

N氏は海外駐在経験を豊富に持ち、先日定年を迎えた。

定年直前まで海外子会社の社長を務めたが、なんと定年後もしばらくはヒラ取締役として現地駐在を続けていた。定年後も海外駐在を継続する例はあまりない。現地の法規制か何かの都合で帰国させられなかった事情でもあるのかどうかは知らないが、その国は一応先進国と言えるところなので日本人を一人駐在させるコストはバカにならないはず。そこまでする必要性が果たしてあったのか・・・。

まあ、そこは大目に見るとしても、問題はそこから数ヶ月後に帰国した後の国内勤務先だ。約10年前、駐在に出る前に部長をやっていた部署で勤務するというのだ。そこには、かつての部下だった係長や主任クラスが今は部長等の役職に就いている。

普通、定年再雇用の場合は定年前と同じ職場で勤務を続けることは必ずしも普通ではない。仮に同じ職場であったとしても、数年前から役職定年となり部下無しの閑職として現場に溶け込んだ状態が作られていることが多い。

N氏の場合は、10年近い間隔を空けて突然昔のボスがヒラ社員として姿を現した形だ。かつての部下たちのやり難さは想像に難くない。口では「Nさん、ぜひお力を貸してください」と言うに決まっているが、本音はどうだろう。「貢献してくれれば有り難いが、余計な干渉はするなよ」と言いたいのではないか。

そもそも、定年再雇用者の勤務部署は特段の事情がない限り全社最適の観点で決めるべきであり、同時に、現役幹部に”老害”と成り得る可能性は排除するべきと思う。N氏の事例は大いに疑問である。

ちなみにN氏と同時期に海外から帰国したS氏は、定年前なのに以前の勤務先(部長を務めた部署)とは全く異なる部署の勤務となっている。N氏こそ、そうなるべきであったのになぜそうならなかったのか、不思議でしかない。

N氏本人は、かつての職場でヒラで勤務して果たして心地よさを感じるのだろうか。とにかく、そこを居場所とするのなら、かつての部長時代の幻をわずかでも思い出すことのないように願いたい。もうあなたの時代は終わっているのだから。