経営スタッフは忖度をやめよ、役員に楽をさせるな

会社には大抵の場合、社長を含む経営陣をサポートする部門がある。経営企画室などと呼ばれる部署だ。そこのスタッフは単に秘書的な役割で経営陣の身の回りのお世話をやらされる場合もあるが、そうではなく経営陣のブレーン、または右腕としての役割がある場合は、特に優秀な選抜メンバーで構成されるエリート部門であるかもしれない。将来の幹部候補生として、エリート教育をしている側面もあろう。

ただ、そのようなスタッフは自分を認めてもらおうとして忖度族になりがちである。どれだけ正しい忖度が出来るかが重要と考え、何も言われなくてもあれこれ準備して差し出すのが優秀な経営スタッフ、と考えてしまいがち。

一方で、経営陣からすると何も指示せずとも色々上がってくれば楽である。これはいいと思えば採用し、ちょっと違うと思えば(何がどう違い、どうせよという指示もせず)首を横に振ればいいだけだ。いずれそのうち、何も言わなくてもいいものが出てくるだろう。

そんなことでいつまでも適切な経営の舵取りができるのか?スタッフが育つのか?経営陣としての責任を果たしていると言えるのか?

自分に楽をさせてくれるスタッフに慣れてしまうと、何も考えなくなる。スタッフとして経営陣をどのような面で楽にしてあげるべきかはよく考えたほうがよい。経営陣の支援はすべきだが、「楽をさせる」なんてのはとんでもない。楽をしたいと考える経営陣になってしまっては、もはや会社にとって災害レベルである。

そもそも内部昇格した者は、「自分は偉いのだから下が色々と面倒なことは全部用意して、ただ自分は首を縦か横かのどちらかに振ればいいだけだ、自分もかつて忖度力を駆使して上に色々やってあげた結果出世できたのだから、今度は下が自分の忖度をして動くのは当たり前だ」などと勘違いしがち。ただ下から来るものを叩いていれば仕事になっていると思い違いする。組織の頭からの腐敗は、こうやって始まる。

経営者は、全身全霊で考えて、決断し、責任を取ることが仕事。経営スタッフに対してその為の支援をさせるのは当然だが、考える材料や決断の材料をただ山のように出させればいいというものではないだろう。それにはコストと時間を消費する。材料だけは山のように出させながら、なんだかんだと難癖をつけて肝心な決断はモヤモヤ。ましては責任などさらにうやむや。そんな事例に事欠かないのが日本の大手企業の実態では。

経営者は、材料が乏しくても然るべき時には決断しなければならない。乏しい材料しか集められないのも自分の実力の内であることを認識すべきである。失敗体験に乏しい経営陣ほど、一から十まで全てが明らかにならないと何も決定、決断できないだろう。そんな人たちはどれだけ時間掛けたって何も決められないし、状況はどんどん変わる。そんな経営者がなんちゃって経営をしている会社は、これまでがどれほど素晴らしくても、すぐに淘汰されてしまうだろう。